学会3世の憂うつ

学会3世として生まれた僕は、創価学園・創価大学を卒業した。 しかし結局、バリ活にもアンチにもなれなかった。懐疑的性格という自らの原罪を呪いながら、それでも信仰を志向して生きる煮え切らない日々を過ごしている。

目次一覧~『人間革命』の時代を読む~

『人間革命』の時代を読む

「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする。」

数ある創価学会の書籍の中でも、特に重要な位置を占めるのが小説『人間革命』。

戸田城聖会長と池田名誉会長が共に生きた日々を描いた、学会思想の凝結ともいえる作品です。

しかし私は、昨今の学会において、同書がまるで「聖書」のように読まれていることに疑問と危惧を覚えました。

新約聖書学者の田川建三は、以下のように書いています。

「一人の歴史的人物をどう描くかは、とどのつまり、その人の生きていた歴史の場をどう捉えるかという問いに帰着する。」

 池田名誉会長が書いた『人間革命』を絶対普遍的な真理としてではなく、戦後の日本という特殊・個別的な場との連関において捉えること。これは非常に重要であると考えています。

そこで本連載では、小熊英二『民主と愛国』を頼りに、戦後日本の代表的な思想家の作品を読んでいきます。

序章:『人間革命』の時代を学ぶに当たって

日本共産党は、かつて「真の愛国政党」を掲げていた。これは、今日の日本の政界を見るとき、考えられないことです。しかし、その「愛国」とは、安部首相が言うような「美しい国を愛する」というようなノスタルジックなものではなかった。同じ言葉でも、その背景にある「心情」は異なる。本連載序章では、小熊英二『民主と愛国』の基本的手法について考察します。

第1章:丸山眞男の思想を読む:個人主義者であることによって愛国者足たりうる

戦後知識人の代表格とされる丸山について考察します。その思想は、「独立した個人」でありことによって「国家に寄与する愛国者」になりうるという、矛盾した2つの契機を持つものでした。偉大な思想家の思想は、いくつもの矛盾するように見える主張が緊張を保ちながら、混在しているものです。それを後世の人間は、単純化して理解しがちであり、丸山もそのような読み方をされてきました。われわれも、池田思想を読むときに、注意しなければならない点でもあります。

第2章:天皇制に学ぶ「忠誠」と「反逆」

丸山真男、中野重雄、そして南原繁という3人を中心に、戦後日本における「天皇制」をめぐる議論を考察します。そこにあったのは、「天皇制」の問題点を認識しながらも、「天皇」個人に愛着を持つ日本人思想家の姿でした。彼らは天皇への「忠誠」を貫いたことによって、天皇に「反逆」したのです。彼らの姿は、創価学会に対するスタンスのとり方を考えるときにも非常に示唆的です。

第3章:憲法9条と愛国

今日まで大論争の的となっている憲法9条。日本国憲法制定時における日本の政界や知識人の議論を考察します。そこでは、今日改憲を主張する保守派が憲法制定を推進し、 護憲を掲げる日本共産党や左派知識人が憲法に反対するという奇妙な光景が見られました。彼らの議論を参考に、創価学会における平和思想の課題も考察します。