学会3世の憂うつ

学会3世として生まれた僕は、創価学園・創価大学を卒業した。 しかし結局、バリ活にもアンチにもなれなかった。懐疑的性格という自らの原罪を呪いながら、それでも信仰を志向して生きる煮え切らない日々を過ごしている。

自公政権:「お試し改憲」としての環境権

予想が外れたので、大変に驚きました。
官房長官が、「環境権」から改憲議論を開始すると発言したのです。

www.news24.jp

僕のような公明支持層の方はよくご存知だと思いますが、これは公明党が長らく「加憲」の立場から主張してきたものです。
環境権。公明党によればこれは、国民に「良好な環境で生きる権利」を付与し、国に「環境問題に取り組む義務」を課すものと定義されています。
ドイツやスペイン、韓国などの諸外国でも憲法において規定されているようです。

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「環境権」を口に出さなくなった公明党議員

しかし、「最近公明党議員の口から、『環境権』って聞かないな?」と思ってらっしゃる方もおられるのではないでしょうか。
2016年参議院選マニフェストを見ても、「環境権」という言葉は全く出てきません(というか憲法改正に関して言及無し)。

その理由は何故なのでしょうか。
ここで、2015年2月23日の毎日新聞における報道を見てみます。

公明党憲法を改正し新たな条項を加える「加憲」の対象から、環境権を除外する検討に入った。環境権の加憲は、同党が選挙公約で掲げており、憲法改正に関する中心的な主張だが、欧州諸国で環境権に関する違憲訴訟が相次ぎ、開発や投資の妨げになっていることを受け慎重姿勢に傾いた。早期の改憲を目指す自民党は、環境権加憲に応じることで公明党の抱き込みを狙ってきたが、戦略の練り直しを迫られることになりそうだ。【高本耕太】

つまり、「環境権必要だと思っていたけれど、外国見たら難しそうだ・・・やっぱりやめようかな?」という事です。
公明党から「環境権」と言い出して、自民党が乗ってくれたのに自分たちは引っ込める。これは少々滑稽です。

また、憲法学者の木村草太は、与党の原発政策の観点から環境権を「加憲」することの難しさを指摘しています(ラジオでの発言のためURLを末尾に記載します)。
原子力発電所をめぐる自民党公明党のスタンスは、「再稼働容認」で一致しています。
しかし「環境権」が「加憲」されれば、原発差し止め訴訟において原告側にかなり有利に働く可能性がある。つまり、現政権の方向性に反してしまうのです。
公明党原発をめぐるスタンスは、はっきり言ってよくわかりません。「原発ゼロを目指す」とは言っているが、期限などはマニフェストに見当たらず、自民党との違いがわかりにくいのです。

私は、このような理由から、自公政権は環境権には手を出さないだろうと思っていましたが、予想が裏切られてしまいました。

「環境権」は「お試し改憲」?

とはいえこれは、自民党改憲に対する本気度を示しているのかもしれません。
自民党が「環境権」を望んでいるとは、到底思えないからです(改憲草案には一応入っていますが)。
ここで、2014年に自民党の船田元・憲法改正推進本部長の憲法フォーラムでの発言を引きます。

「姑息かも知れないが、理解が得やすい環境権などを書き加えることを1発目の国民投票とし、改正になれてもらった上で9条を問うのが現実的」

やはり、「環境権」という国民的理解の得やすい、かつ公明党の賛同を得やすいテーマから着手したように思われます。その先にあるのは、やはり憲法9条改正でしょうか。

安倍晋三氏はいつまで総理をやるつもりなのか?

しかしここで1つの疑問が湧きます。安倍総理の任期です。

最近話題になっている安倍総理自民党総裁としての任期は、2018年9月で終わってしまいます。つまり従来の自民党のルールに従うならば、あと2年で安倍総理の時代は終わる。
果たして2年で「環境権」を「加憲」し、9条改正にまで持ち込む事ができるのか?
これは難しいでしょうから、安倍総理は任期の延長や党則の改正を図っていることでしょう。

「安倍しかいない」という空気を党内に充満させるには、やはり「選挙」です(我々公明支持層は、「また選挙か・・・」と胃が痛いことでしょう)。
果たして解散カードを切ることがあるのか、切った時に自民党は大勝できるのか。

参考までに、今回の参院選の得票数を衆院選に当てはめたら、というシュミレーションをした記事をアップさせていただきます。

www.chunichi.co.jp

どうやら自公で369議席(約78%)の議席を確保するとのこと。
やはり現政権の強さを感じざるを得ません。ですが、いつまで衆参両院で圧倒的勢力を築くことができるか、という点には疑問符がつきます。

憲法議論は避けられない

間もなく「環境権」の議論が本格化するのでしょう。
「環境権」を「お試し改憲」のように考えている自民党議員が一定数いるだろう事は、非常に気にくわないですが、この問題はこの問題としてしっかり考えていきたい。

たとえ「環境権」が「憲法9条」改正 の準備段階の取り組みだったとしても、我々はその議論を拒否することはできません。

自公政権を選んだのは、他ならない我々国民なのですから。

 

木村草太の見解は、下記ラジオ番組から。

m.youtube.com

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